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ショート「手」

「あいつ帰省してるから暇なんだ。鍋でもしようぜ」
そう言って私を呼んだくせに、さっきから慶太はクッキーと遊んでばかりいる。
「ユリが地元帰ってる間、預かってるんだ」背中で声が聞こえた。私はわざと音を立てて野菜を切り、何も聞こえなかった振りをする。
「猫ってこんなかわいいのな。俺知らなかったわ。まぁ、気分屋なところは飼い主に似てるけど」くつくつと慶太が笑う。全然笑えねーよ。 私は頭の中で悪態をつく。

 火にかけた鍋がぐつぐつと煮えていく。つられるように私の心も次第に泡立つ。

  彼女が居ない時に呼ばれる友達。
  友達って何。
  いっそ言ってしまおうか、ユリの話はしないで。
  いっそ聞いてしまおうか、慶太にとって私って何。

 慶太のたわいない話に相づちを打ちながら、ぼんやりとそんなことを考える。

「どうした?」
 慶太の声が急に近くに聞こえて、私ははっと我に返る。振り向くと、すぐ側にクッキーを抱えて慶太が立っていた。猫の背をぎこちない手つきで撫でてやりながら、心配そうに私を見下ろしている。
「おまえ、具合でも悪い?」
 私は ううん、と首を振ってみせる。
「ほんとに?」
「ほんとだよ。おなかが減りすぎて、ぼーっとしただけ!」そう笑うと私は慌てて慶太に背を向けた。なんだか急に泣いてしまいそうになったのだ。

「じゃあ早く食おう」慶太の大きな手が私の上に降りてくる。
 それは今の私には何よりも幸福な一瞬だ。頭のてっぺんをぽんぽんと撫でて慶太はさも楽しそうに笑う「ほんとおまえって食い意地張ってんなぁ」

 友達。それは私が選んだ関係だ。側に居るために私が選んだ。今更変えられない。

  慶太なんて大嫌いだ。

頭の片隅で悪態をつきながら、私は煮えた鍋を両手でしっかりと掴んで、慶太が待つテーブルへと足を進める。


――― 愛猫の背中を撫でる延長で私に触れるあなたが嫌い ―――

テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

Secret

セツナイ…
なんだか泣けてくる…

あ、ちいさん、こんばんは☆
ご挨拶が遅れちゃいました

歌もストーリーも、私好みできゅーん
もっといっぱい読みたいです^^

砂花ことはさま

こんにちは!拙い文章を読んで下さってありがとうございます☆
主人公は私ではないけど感情移入しながら書いたので、ずっと眉間にしわが寄ってました(笑)

きゅん党代表のことはさんにきゅんとなってもらって、感無量です♪

こんばんは

ちいさん、すごいですね。
短歌を詠むのも上手くて、こんなに切ないストーリーまで書けて。多才ですね〜。

ほんと切ないですね。
男女の友情って、永遠に謎です…。

採用、おめでとうございます〜♪

No title

胸をぎゅっとつかまれたような気がして
。。。。息もつかずに読んでしまいました
ちいさんでヮナイとのコト ・・
その昔 野菜に八つ当たりした経験 私にはあります 。。。 白菜なんて大きらいだぁ〜!!

ひいらぎさま

コメントありがとうございます♪
文章って書くの難しいですね。たったこれだけの文なのに頭が混乱してしまいました(笑)
男女の友情、私はあると思うのですが、一方が恋してしまった時点で実質崩壊しちゃいますね。。。あとは演技力勝負^^;
短歌も文章もヘタの横好きですが、コメントいただけて嬉しいです♪

台所のキフジンさま

コメント、白菜のところ笑ってしまいました(^^)
こんな拙い物語、読んで下さってありがとうございます。でも息はしながらの方が良いかと思われ(笑)
私ではないけど、私に起こり得そうなことだと思います。友達という皮を被ってでもずっと側に居たいと思ってしまうずるい人間なので(照)
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