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3月のうた

『デンティストとのエチュード』

予約の日は一日まとわりついて来る記憶の中の歯医者の匂い

「……さーん」呼ばれるままに患者達消えるベージュのドアの向こうに

さかさまの美人歯科助手に覗かれて昨夜かじったガーナを思う

少しずつ強い麻酔を求め出す 痛みより恐怖心を消してよ

硬質な冷たい器具に触れられて仰け反る舌よ 意識の外の

泣いたって止めないくせに「痛かったら右手を上げて」なんて、ひどいわ。

大勢の中の一人と知っていても私は先生しか選べない

「お大事に」目だけで笑う先生はマスクの下に牙を隠して

「もうこれで終わりにしたい」と言えなくて入れられてしまう次の約束

<未来2012/3月号掲載>

*こんげつのよだん
少し大人っぽくも読める一連。抜粋じゃつまらないので全部載せました。全部でもつまら...コホン。
子どもの頃、歯医者は恐ろしいもののてっぺんでした。これみよがしに漂う特有のにおい。キインと脳みそまで響くドリルの音。待合室まで届く他の子どもの叫び声。ぎゃあああ。考えただけで鳥肌。
大人になってもそんな恐怖を抱えている人は案外多いかもしれません。上の連作は、そんな人たちの不安を薄め、ちょっとでも「歯医者行ってみようかな」と思ってもらえるように作りました。嘘です。自分が怖いのを紛らわすべく、診察台の上で必死に短歌を考えていたのでした。

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