4 月 の う た
『渋谷からー』
色のない映画一本きみと観てそのまま歩く渋谷区渋谷
人混みを擦り抜け数歩先を行く男のシンメトリーな両耳
ごらん、この喫茶店には人に似た姿の渡り鳥が飛来する
白黒のウエイトレスが連れてくる喫煙席のにおいあれこれ
ふときみの視線が留まるテーブルの木目なぞっている指先に
背中までほとる私の身代りかポットで冷めてゆくダージリン
雪解けのように次第に色付いて渋谷が喧噪を取り戻す
セーターの厚みひびいてむくむくのコートは二の腕が苦しそう
プライマリーカラーを抱いて重なれば私たち白い光になれる
来月はお会いしましょう原宿の駅の後ろに広がる森で
<未来2011/04月号>
・・・・・
先月はまるっと更新わすれてしまいました。
2ヶ月振りです。
冬に詠んだから冬のうたばっかり。
ちいさんこんにちは^^
冬の歌好きなんで、ちいさんの冬の歌はこうきたか!と思いつつ読みました。
「渡り鳥」が一連のキーワードだね。
色のない感じとか寒さとかもあって、二首目のシンメトリーな耳というのも鳥が想像できるし、来月は本来の姿(鳥)で森で会おうというのも、色っぽくて、いいなぁ^^
構成とかいろいろ考えたんだろうなぁ。
特に一首目と三首目、四首目が好きです☆
来月も楽しみにしてるね。
こんにちは。お邪魔いたします。
全体的にスタイリッシュな印象を受けました。カタカナ語の硬質な響きが多いこと、そして「鳥‐人」、「熱ー冷」、「原色‐白」、のように対照的な要素が一首ごとに盛り込まれていることからくるシャープなイメージに加えて、一連としてクローズアップされていくシーンの編集がとてもよく計算されているように感じました。おしゃれでかっこいいですね。
映画でいうと『オズの魔法使い』や『初恋が来た道』みたいに白黒とカラーで世界を覗くような気がしました。一首から六首めまでが「色の無い」「白黒」の冬の世界、ちょっと不安で、けだるいような停滞気味な時間。あと残りの歌において色を取り戻して明るい春の兆しが見えてくる(「むくむくの」の楽しい表現が利いている気がします)感じでしょうか。
テーマは「冬、灰色、街」から「春、カラフル、新緑(森)」へといった変化に二人の関係がひらけて行くことをかさねているのかなと読みました。
ですが、イマイさんの読み、面白いですね!なんで鳥が出てきたんだろうってよく分からなかったのです。
笑い飯の鳥人のネタを思い出した時点で負けだったと思います(笑)
僕は一首目、二首目、四首目、五首目が特に好きです。
「そのまま歩く」、「シンメトリーな両耳」、「においあれこれ」、「木目なぞっている指先に」。素敵です。
五首目については某所で「視線のねじれ」の話題があったことも思い出しました。
いつも楽しく読ませていただきましてありがとうございます。
イマイさんこんにちは。
ありがとうございます。お返事遅くなりすみません。
> 「渡り鳥」が一連のキーワードだね。
ほほう!全然気付いていなかったけどそう読めますね!ごらん~の一首は変則的リズムですがとっても気に入っているんです。だから他の歌にも知らず知らず影響を与えているのかも!それを見つけていただけて嬉しいです^^
> 来月は本来の姿(鳥)で森で会おう
と、はっきり言い切ったわけではないのですが、自分=鳥みたいな考えはあったのでそこを読み取っていただけたのは驚きました。
連作はやっぱりむずかしいです。イマイさんに教えていただいたコツ?も考えているんですけど、なかなか。もがくなかでじわじわ掴めればいいなと思います。
またいろいろ聞かせて下さいね(。・ω・。)
飯田さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
ス、スタイリッシュな印象!ウケました。
そんなに作り込むぞ!と意気込んでレイアウトしたわけではないのですがかっこよくまとまっているなら嬉しいです。
白一色の景色が雪解けによって色を取り戻して行く感覚を渋谷という都市に重ねた次第です。
テーマについては飯田さんのコメントを読んで逆に「そうだったのか」と気付きました。
二人の関係が開けて行く、ね。なるほどなあ。そういう意図だったことにしておきます(笑)
「そのまま歩く」、「シンメトリーな両耳」云々はあげていただいて恐縮ですが、あまり注意したところではなくどれも普通の言葉だから(^^;)ほめられて複雑です。
五首目について、「視線のねじれ」の話題とはどちらであったどんな話でしたか。How to かな。どこだろう。内容も全然わからない。。。すぐ忘れてしまうんですよね。特に最近は新しいことが覚えられなくて、ほんとに悩ん…ってどうでもいいか。
感想ありがとうございました!勉強します。
ふたたびお邪魔いたします。
昨年度の私のコメントが冗長wで要を得なかったのではないかという反省から、簡潔にしようと試みたのですが、やっぱり要を得ないようですね(^^;)
結局長くなりますが、普通とおっしゃいますところ、挙げた根拠をやっぱり書かせてくださいね。
「そのまま歩く」というのは「色のない世界を引き連れたまま」と感じとれて、これを導入として以後の歌もモノクロで窺うことができますから、上手いなと思ったのです。
「シンメトリーな両耳」については、耳は大概シンメトリーだと思いますが、改めて言われると気もち悪いですよね。そもそも何故それに気づいて、わざわざ言うのか。こわくて不可思議な生々しさ、迫る実感があるように思います。
「においあれこれ」は投げやりかつ繊細とでもいう表現で、煙草のにおいが単純に嫌いだ、という以上の感情、うーん言葉にしがたいのですが、気だるさや別の世界を感じて浮かんでいるような感覚が漂うように思えます。
「木目なぞってる指先に」は例えば「木目をなぞるこの指先に」などとすればリズムはすっきりするのでしょうが、このひっかかる表現がとても印象的です。いじいじっとした空気が伝わってくるようで、静かな凄みがあるように感じます。
ただ個人的な感想なので、どうか恐縮したり複雑にならないでください。「変なの」ぐらいでいいですから(笑)ざあっと目を通していただければ幸いです。だいたい的外れですが10回に一度ぐらい良いこと言うかも(少なすぎるかw)
そして「視線のねじれ」についてはすみません。「ねじれの位置」とすべきところでした。
Mさんが去年、N短の「数」の歌で入選なさったときに、ちいさんが「ねじれの位置は詠みたいと思っているワード」とおっしゃていたのを覚えていたのですが正確を欠いていました。
この歌においては「わたしの」でなく「きみの視線」というところです。なぞっているのは「わたしの指先」だと解釈したのですが、「わたし」の目は「きみ」の行動を捕らえてるわけですね。この「見られている/見ている」視点についてだったのですが、これは「ねじれ」ても「ねじれの位置」でもないような気がしてきました(汗
でもこの構図はとても魅力的です。
以上、最近は昨日なに食べたかも思い出せない飯田でした(←本気でこわいです)
飯田さん、再びありがとうございます。
解釈は読み手にゆだねますのでこんなに詳しくご説明いただかなくても。
「においあれこれ」については、なにが禁煙席だよ、めちゃくちゃ煙いじゃないの。という気持ちと、あれ、この紅茶めずらしい香り、みたいな気持ちが混ざっているのであれこれとしか言いようがないですね。
「木目なぞっている指先に」については繰り返しになりますが、私の中で自然な言葉運びなので。そこからいろいろ読み取れるとしたら棚ぼたですね。
丁寧に読んでいただきありがとうございます。