★『テナント募集のエチュード』
前の店が出て行つてから丸二年貼りつぱなしの「テナント募集」
貼紙は貼られたまんま忘れられ北風だけが扉を叩く
築三十年で一番華やいだ頃に居たのがあの店であつた
ビルの見る夢はどんなか 華やいだ日々を思つて雨に濡れるか
音楽の鳴る夜があるあの店で流れた曲の追憶として
シャッターに積もる埃よぼろきれで拭へば全て取れるだらうに
希望者が居ないではない、条件が厳しいのでもない、と思ふが
この街のこの色に合ふ店があるさ/信じて待つてまた冬が行く
テナントを募集してゐる此のビルを終の居場所とするテナントを
<未来2012/5月号掲載>
*こんげつのよだん
先にアップしてある「未来から来ました」と同じ号に載っている歌たちです。めずらしく旧かなです。エッセイを見て「どれどんな歌を読むんだろ」と興味を持って下さる方がいたとしたら騙したみたいだなあ…。
今年の初めあたりに詠んだものが中心の、お気に入りの連作です。
「未来から来ました、小林です」そう言った瞬間、室内に小さな笑いが起こった。ただでさえ緊張していたのに全身から嫌な汗が出る。(何か変だった?)頭が真っ白になる。
二月某日、横浜はみなとみらいでその会は開かれた。所謂結社系・ネット系などの枠を超えて歌会をしましょうというツイッターでの呼びかけに、日本各地から集まった参加者は21人。結社や同人誌の集まりでも、仲間内だけの集まりでもないために会は自己紹介から始まった。そして話は冒頭に戻る。前の人に習って所属結社名を言った私の言葉は、まるでタイムスリップしてきた未来人であるかのようにへんてこに響いたのだ。一拍置いてやっと状況が理解できると、私は急速に熱くなる顔をそっと押さえた。
その夜、ツイッター上では多くの歌人や俳人が《○○から来ました、と名乗るには怪しい結社名》をこぞって考え、呟いた。中には苦笑いしてしまうものもあったが、流石は言葉に敏感な面々。どれもこれも面白い!「子宮」や「墓場」、「その筋」に「FBI」まで。「FBIから来ました」とは確かに怪しい。実際にある結社名では「星座」や「地中海」も面白いだとか、「塔から来た、じゃつまらない」と塔の方が呟いていたり…。中でも思わず唸ったのは「かばんに入っています」という言葉。千葉聡さんがかつて使ったというこのネタ、何とも洒落ていて可愛らしい。(ツイッター上での発言者は山田航さん)
私の何気ない一言から 言葉を愛する人たちの茶目っ気ある横顔が垣間見えた、不思議で、印象深い出来事だった。
《未来2012年05月号/その日その日》一部修正
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上は、二月にみなとみらいで開かれた歌会の後日談 です。ごらんの通り、肝心の歌会の内容については全く触れず、極力お名前も省かせていただきました、すみません。歌をあげて紹介するには字数が全く足りず、そして参加者である沼尻さんが既にレポートを書かれたと知っていたこともあって、別のところに焦点を合わせました。
正直言うと、いまだに未来所属とは言い辛い気がします。反応が怖くてびびってしまう。だからそのものズバリの文章を書くのにもかなり抵抗があったのですが、まあ…あの…書いちゃった。なお入稿前には響乃さんに原稿を見ていただきました。お忙しい中ありがとうございました。いつもお世話になっています(あ、先日はごちそうさまでした)。
みなとみらい歌会、とても刺激的でした。時間の半分はみんなで連作を読み解いたのですが、絵がすっと立体になっていくような感覚があって!自分の読みの浅さを痛感しながらも興奮したなあ。それからもう半分は一首ずつ持ち寄っての歌会。集まった歌に好きなものが多くて、優柔不断な私には投票だけで一苦労でした。ましてやコメントなんて…!私の歌にもあたたかい票やきびしい評が付き、聞きながらも動悸がひどかったです。
私は歌会のみの参加で、膝の震えもおさまらないうちに会が終わってしまったのですが、二次会もすごく盛り上がったようでちょっと後悔しています。
発売中のNHK短歌5月号に佳作で一首載っています。
全身を預けてくれる人といて私は椅子の幸せを知る
・・・・・・・・・・・・「椅子」佐伯裕子さん選
少し前に詠んでいた歌を推敲して出したものです。
椅子、好きです。ソファも好き。座るのが好きです。楽だもの。部屋にソファ欲しいなあ。すでに本と服とで埋め尽くされてそんなスペースはないのですが。…いったい何の話。
そして心にも大きなソファを。(名言風)
あ、今号のN短は豪華でした。入選・佳作のページは特に椅子がおすすめ(自分で言う)。また、ジセダイタンカもおすすめです。
★『初詣でのエチュード』
この道は波の来た道 神社へと向かう車中で会話が止まる
冬の雲 北国らしい色をして母の項に雪を降らせる (項:うなじ)
本殿へ続く階段昇りおり跳ねる草履をしかられながら
真新しい灯籠が立つ 今年こそ穏やかな年になりますように
来年もまた来ようねという声が響いて消える塩竃神社
<未来2012/4月号掲載より>
*こんげつのよだん
1月送稿分なので、今更初詣でです。季節感なくてすいません。
冬に帰省した際、母と出掛けた日のことを詠みました。雪の降る中訪れた神社では、妙にきれいな灯籠を見つけました。それは単に、新しく追加されたのかもしれません。でももしかしたら古いのが地震で倒れて壊れてしまったのかなとも思いました。今年は穏やかな年になれば良いと心から思います。
田中ましろさんプロデュースの
うたらばブログパーツ設置できましたー!
あたしゃパソコンとか苦手でねえ。前にチャレンジしたときにうまくいかず長いこと放置してました。だけど、ブログパーツをいろんな人のブログで見かけるたびに羨ましくて。悪戦苦闘の末に(笑)うちのブログでも見られるようになりました\^▽^/やったー
嬉しいついでに、採用いただいた歌も載せます。
気付かない振りが下手だね不器用なところも良いと思ってたけど・・・第27回テーマ「伝」
恋人の役を解かれて野良猫に戻る寝るのも鳴くのもひとり・・・第28回テーマ「解」
開いたらこぼれるだけの桜花 想いもそうかこぼれるだけか・・・第29回テーマ「開」
2首目は表紙フォト短歌として、かわいい猫さんの写真と組み合わせていただきました。いろんな方に見ていただけて本当に嬉しかった。また、3月にあったうたらばのイベントでは「集」というテーマで一首投稿↓↓
スカートに拾い集める あなたからこぼれつづける春のつぶやき・・・テーマ「集」
何人かの方が票を入れて下さったとのこと。おかげでこちらもきれいな写真を付けていただきました!感謝。この歌はイベント開催のお祝いもかねて明るいイメージで詠みました。たくさんの方と繋がっていられるツイッターの暗示でもあります。
会場ではとにかく壁一面に貼られた投稿歌が圧巻でした!感動してずーっと見てた(笑)。会場は終始満員状態で、私は安定の人見知りでしたが^^;お友達と再会したり、ずっとお会いしたかった方にご挨拶したり、幸せな一日でしたとさ。
笹師範のブログで2首拾っていただきました。
「枕詞を使った歌」
・から衣袖をつかめば曇る目に照らされさらに影は濃くなる
・花ぐはし桜香し花びらがひらひら扉から帰り来る
3首出して2首…健闘したと思う(^^;一首目は古い歌の推敲版です。もともと枕詞は入っていなかったので、結果的には全然違う形になりました。浮かずに収まったかな、という印象です。二首目は音を楽しんで作りました。投稿時のコメントにも書いたのですが、枕詞をこんなに食べたのは初めてで…。想像よりおいしかった!…のですが、調理法をもっと知りたくなりました。料理ヘタクソなんだよなあ。
2012/4/1 自由題で
どこにどうふれればどんな音がするか覚えたアコーディオンのボタン
・・・・・・・・・・・・・・・放送外 穂村弘さん選
ついに最終回を迎えました。夜ぷち。
いずれ思うところを記事にしたいのですが、今日は掲載歌についてをとりいそぎ。
自由題といわれて、咄嗟にこの歌を思い出しました。これは去年の今ごろかもっと前に詠んだ歌で、某所に出した連作のうちの一首でした。後にネットの歌会にも出しました。どこまで私の意図したところが伝わるのか知りたかったのです。いろいろな意見を頂き、刺激的な時間でした。推敲もしてみたけれど結局この形に戻って、最後に穂村さんへぽーんと投げてみることにしました。
放送外でしたのでどう読まれたかは分からずじまいですが、私自身はまず穂村さんにとっていただけること自体がめずらしいので(笑)ひとまずはハッピーエンドとなりました。